主観的予備的併合「適法論」(学部卒論)




本論文は、主観的予備的併合「適法論」です。令和8年の現時点においても適法論を維持します。

ここに私の学部卒論、「『主観的(主体的)予備的併合』に関連して、多数当事者訴訟において、統一的事実認定・統一的法的判断を下す方法論を検討した学部卒論」を掲載させて頂きます(平成30年予備試験の解答です)。


本論文の概要

主観的予備的併合の定義を、滝川叡一判事の有名な定義「予備的請求のその訴えは、その主位的請求の確定的認容を解除条件として訴訟係属を生ずるが、その判決の申立ては主位的請求棄却の判決がなされることを停止条件とする予備的併合」とし、「そのうえで、判決が、主位請求を認容するときは、予備的請求についても棄却の判決をするもの」と定義する。

そして、民訴法246条の解釈として、井上治典先生が指摘されていたように、主観的予備的併合における原告の「申立て」を、「主位請求認容、予備請求棄却」のワンセットか「主位請求棄却、予備請求認容」のワンセットであると捉え、裁判所が主位請求認容の場合でも予備的請求に棄却判決を下すという解釈を採れば、主観的予備的併合を否定する理由の「予備的被告の地位の不安定」を取り除くことができる。これで、主観的予備的併合を「適法」とできる。



【公開査読のお願い】

民事訴訟法学会関係者の皆様方・その他の関係者の皆様方へ

このページに掲載を致しております、拙著の論文「主観的予備的併合適法論」につきまして、「公開査読(オープンピアレビュー)」をお願い申し上げます。



本論文発表の目的

掲載目的は主に2つ理由があります。1つには、純粋に私の論文を、広く、公表させていただきたいこと。2つ目には、民訴法を学んでおられる方々の、多数当事者訴訟の学習の便宜のために掲載させていただきます。

ただいくつかの注意点があります。まず、多数当事者訴訟を身に付けたいと考えられるのであれば、できれば近道するのではなく、私のレジュメに沿って、「自ら考え・自ら調べるスタンス」を採って頂きたいと希望します。このような方法を採ることが、民訴の実力をつけるmost betterな道であると考えているからです。

従いまして、司法試験の受験までにまだ時間的余裕のある方々は、私のレジュメに沿って、着実に実力をつけて頂きたいと希望します。このような次第ですので、司法試験の受験3ヶ月前までは、この論文は見ないで頂きたく存じます。

〔一段落削除(2026/01/03)〕

次に、本年(2025年)受験される方です。もう、ご自身で読み込んでください。その際に1つだけお約束をお願い致します。受験1ヶ月前の本年6月15日までに、追加の論文(ページ数にして4頁程)をUPロード致しますので、それを「必ず」読んで下さい。それがお約束です。

なお、まことに僭越ながら、民訴に関して、1問答練にオススメな問題がございます。私のレジュメの第1章に載っている[大問3]、すなわち『ゼミナール民事訴訟法』(日本評論社)の25頁の問題です。さらに、同書は、ほかにも良問揃いですから、国家試験前の実力確認・知識確認にお使いいただけると幸いです。

最後になりましたが、皆さま、体調管理につきましては、くれぐれもご自愛くださいますよう、お願い申し上げます。



このページ内の「民訴法の論文」は、家庭用(非商用)使用に限り、ご自由にプリントアウトして、お使い下さい(著作権法30条1項)。また、ご自由に引用して下さい(同法32条1項)。

また、ご質問等がございましたら、【お問い合わせフォーム】より、お気軽にご連絡ください。


【PDFは(↓)へスクロール(2件)】


【注記:下記の論文内には、「法律上併存し得ない場合」及び「事実上併存し得ない場合」の「例の提示に誤り」がある箇所があります。他にも、訂正するべき箇所が多数あります。正確には「令和版の筆者の論文」を参照してください。(2025 Autumn 追記)】


ジュニア・リサーチ・ペーパー

主観的予備的併合に関連して

~ 統一審判を図る方法論の検討 ~

2008年度

新潟大学 法学部

捧 大地

要 約

 民事損害賠償請求訴訟を提起するにあたり、その責を負うべきと思われる被告が複数存する場合がある。例えば、【例1:民法717条における土地工作物の占有者(Y1)又は所有者(Z1)の責任】及び【例2:未成年者(Y2)による不法行為の被害者が責任追及する場合に、Y2が責任能力(民法712条)を有していたかどうかにつき、その判決の判断の違いにより、Y2又はその監督義務者等(Z2)のどちらが賠償責任を負う(民法714条1項本文)のかが異なってくる場合】などがある。

 これらの事例で、原告が被告双方への請求を別訴によった場合、各訴訟における判断が区々になり、原告が「両負け」する可能性がある。【例1】に則して言えば、Y1に対する訴訟ではY1に過失がなかったとされて敗訴し、Z1に対する訴訟ではY1に過失があったとされて敗訴し、両負けしてしまうのである(もちろん理論上は両勝ちもありうる。)。

 この原告の両負けを防ぐ為に、請求の客観的予備的併合の事案と同様に、人的に請求の予備的併合を提起する方法がある。これを主観的予備的併合という。この方法によれば被告双方への請求に対する判断が区々にならず統一審判を下すことができるので、原告の両負けを防ぐことができる。

 しかしながら、この主観的予備的併合の予備的請求は、主位請求が認容されることを解除条件とする訴えであるため、予備的被告に必ずしも本案判決が下されないという地位の不安定をもたらす。ここに主観的予備的併合に対する批判がある。

 これらの原告の不利益と被告らの不利益を解消するべく、平成の民訴法改正により同時審判の申出(民訴法41条)が可能となった。これにより、【例1】の問題は解決された。ところが、この民訴法41条は被告双方に対する請求が「法律上併存し得ない」場合に限られている。従って、【例2】は「事実上併存し得ない」場合なので、いまだ問題解決されていない。

 この「事実上併存し得ない」場合においても統一審判を下して原告の両負けを防ぐ方法がいくつか提唱されている。先に掲げた主観的予備的併合、必要的共同訴訟に関する民訴法40条を準用する方法及び訴訟告知(民訴法53条4項、同46条)による方法などである。

 本卒論では、原告の両負けを防ぐべく統一審判を図る方法としていかなる方法がよいのかにつき検討するものである。結論については、是非、本文をご覧頂きたい。

目 次

第1章 はじめに  ………………………………………………………………………… 1

第1 井上治典先生説例

第2 問題の所在

第3 両負けの回避

第2章 主観的予備的併合の紹介  ……………………………………………………… 2

第1節 主観的予備的併合の有用性

第1 事案設定

1 法律上併存し得ない事案

2 事実上併存し得ない事案

(1)契約当事者不明型

(2)不法行為型

第2 問題の所在

第3 主観的予備的併合による解決方法

第2節 主観的予備的併合への批判

  • 学説による批判
  • 最高裁昭和43年判決

第3節 最高裁昭和43年判決後の動向

第3章 法41条の紹介  ………………………………………………………………… 6

第1節 法41条により可能になったこと

第1 法41条により可能になったこと

第2 法41条制定後の主観的予備的併合の必要性

第2節 法41条の限界 ―「法律上併存し得ない関係」に留まる点―

第1 法41条の限界

1 法41条の解決可能範囲の狭さ

2 法41条では解決できない事案

第2 法41条制定後における依然とした主観的予備的併合の必要性

第3 法41条制定後における主観的予備的併合によらない統一審判を図る方法の必要性

第4章 統一審判を図るための方法論の検討  ……………………………………… 9

第1節 準必要的共同訴訟理論の紹介及びそれへの批判

 第2節 訴訟告知による方法の紹介並びにそれへの批判及び限界

第1 訴訟告知により統一審判を図る方法

第2 二つの最高裁判例

1 最高裁昭和45年10月22日判決(民集24巻11号1583頁)

2 最高裁平成14年1月22日判決(判時1776号67頁)

第3 訴訟告知による方法の限界

第3節 具体的方法の検討 ―法41条を類推ないし拡張する方法―

第1 自説の積極的理由付け

第2 法41条を法律上併存し得ない事案「のみ」と限定した場合の同条の存在意義

第3 法50条3項で法41条が準用されていること ―法50条1項が事実上併存し得ない事案をも含むこと―

第4 法律上併存し得ないものと事実上併存し得ないものの区別の不明確性

1 法律上併存し得ないものと事実上併存し得ないものの区別の不明確性

(1)債務引受を例にして

(2)「ただ一つの契約」を例にして

(3)民法717条を例にして

2 当事者の主張の仕方により法律上併存し得ないものと事実上併存し得ないものが簡単に変容すること

3 小括

第5章 上訴審の統一について  ………………………………………………………  25

第6章 まとめ  …………………………………………………………………………  26

第1章 はじめに

 民事訴訟法の分野においていわゆる主観的予備的併合に関する議論がある。私は、民訴法を勉強する中で次に紹介する井上治典先生の説例に出会った。そして、この問題を解決したいと願い、卒論にこのテーマを選んだ。

第1 井上説例[1]

貸金債務の返済をめぐってXY間、XZ間に争いが生じた。契約書としては、Yを債務者としZを連帯保証人として、Xが金300万円をYに貸し付けた旨の簡単な自筆の書面がある。

XがY、Zそれぞれに返済を迫ったが、Y,Zが支払わない理由はつぎのとおりである。

Y:この貸し借りは、ZがXから借りることになっていたところ、折柄、秘書手当流用問題で国会で追及されている政治家の秘書Zが債務者になるのはZにとっても、Xにとってもまずいということで、名目上自分が頼まれて借りることになっただけで、この事情は、XもZも十分承知しており、契約の際確認している。現に300万円も、XからZに直接渡されている。したがって、自分が支払う義務はない。

Z:たしかに、自分が債務者になれない事情があった。だから、Yに借りてもらったのであって、自分は法的には債務者ではない。契約書には、連帯保証人となっているが、実質を言えば、保証人ではなく、単なる立会人にすぎない。300万円はXから直接渡されたが、それは、自分がYに貸していた金を払ってもらったものである。

Xは、Zが債務者になるのはまずいという事情およびそのことをX,Z,Y間で確認したこと、貸金をZに直接渡したことは認めている。

第2 問題の所在

 Xが、借主がYであるとしてYを訴えた場合に、借主はZであったと認定されると敗訴し、借主がZであるとしてZを訴えた場合に、借主はYであったと認定されてしまった場合にも敗訴し、そうなると、Xは両方の訴訟で「両負け」してしまう[2]。

 そこでXとしては、両方の訴訟で「統一的な」事実認定及び審判をしてもらいたいとの希望を有するのである。

第3 両負けの回避

 詳しくは後述するが主観的予備的併合という訴訟形態(Xが、主位的にYを被告として貸金の返還を請求し、Yが債務者でないと認定された場合に備えて、予備的にZを被告として貸金の返還を請求する。)を採れば、この[井上説例]においても統一的な審判が可能になるので、原告にとっては有用な併合形態である。

 ところが、主観的予備的併合には肯定説と否定説の争いがある。そこで本卒論では、主観的予備的併合をめぐる議論を検討したうえで、統一審判を図る方法論を探りたい。

第2章 主観的予備的併合の紹介

訴えの主観的予備的併合とは、複数の被告に対する各請求が、実体上両立し得ない関係にある場合に、原告がいずれか一方の請求を主位的に主張し、それが認容されることを解除条件として、予備的に他の〔被告に対する〕請求の審判を申し立てる併合形態をいう[3]。

 なお、主観的予備的併合は、原告が複数の場合もありうるが、問題が存するのは被告が複数の場合であるので、本卒論でも被告が複数の場合を想定して論を進める。

第1節 主観的予備的併合の有用性

 主観的予備的併合の有用性を説明するのに事例に則して説明するのが便宜であろうと思われるので、いくつか事案を設定する。

第1 事案設定

1 法律上併存し得ない事案

[説例Ⅰの1](民法717条)

 歩道を歩いていたXが、落下してきた建物の看板に当たって重傷を負った。Xは、建物の占有者Yに対して土地工作物の占有者責任(民法717条1項本文)を追及したいが、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしていたと認定される場合に備えて、所有者Zにも責任追及(同項但書)をしたい。

[説例Ⅰの2のア](民法117条)

 買主Xは、A代理人Bと、A所有の動産の売買契約を締結した。Xは、Aに対して目的物の引渡しを請求したいのだが、Bが無権代理人であり、表見代理も成立しないと認定される場合にはBの無権代理責任(民法117条1項)を追及したい。

([説例Ⅰの2のイ]は後ほど登場する。)

2 事実上併存し得ない事案

(1)契約当事者不明型

[説例Ⅱの1][4]

Xが、ある個人Aと契約をした事実があるけれども、そのAが個人として契約したのか、法人の代表権を有して契約したのかわからず、契約をした相手が個人か法人かわからない事案。

[説例Ⅱの2] (後掲最判H14年型事例)

 Yは建物建築の施主であり、Zはその請負人である。Xは、当該建物に家具等を納入した家具販売会社である。Xは、Zが当該家具等の買主であるとして代金請求をしたいが、Yが買主であると認定される場合に備えて、Yにも代金請求したい。

(2)不法行為型

[説例Ⅲの1]

 Xは、A(責任無能力者)の不法行為により怪我を負ったが、Aの不法行為時の監督義務者がAの親であるY1なのか(民法714条1項本文)、保育士Y2がAの不法行為時における監督義務者に代わって責任無能力者を監督する者であったのか(同条2項)、はっきりしない場合。

[説例Ⅲの2]

乗客100名、客室乗務員1名(A)の乗った旅客機が飛行中に(即ち密室において)、Aが何者かによって絞殺された(法医学的には1名の手により絞首された)。

 この場合に、Aの遺族Xは、乗客(Y1ないしY100)のいずれか1名に対して責任追及したい。

第2 問題の所在

 これらの説例においては、原告がそれぞれの請求を別訴によった場合、それぞれの訴訟の事実認定や判決理由が区々になり、「両負け」してしまうおそれがあるということである。

 [説例Ⅰの1]に則して言うと、XのYに対する訴訟ではYが損害の発生を防止するのに必要な注意をしていたと認定され、XのZに対する訴訟ではYが損害の発生を防止するのに必要な注意をしていなかったと認定された場合、Xは「両負け」してしまう。

第3 主観的予備的併合による解決方法

[説例Ⅰの1]においてXがこの方法を採ると次のようになる。すなわち、Xはまず、主位被告Yに対して土地工作物の占有者責任(民法717条1項本文)を追及する。そしてYが損害の発生を防止するのに必要な注意をしていたと認定される場合に備えて、予備的に予備被告Zに対して土地工作物の所有者責任(同項但書)を追及する。

このような併合形態を採ることにより、Y又はZのいずれかの責任が認定されるのでXが両負けすることはない。ここに主観的予備的併合の有用性があり、主観的予備的併合不適法論者もこの有用性自体は認めている。

 しかしながら、この有用性が存するにも拘わらず主観的予備的併合の適否については両説が入り乱れている。そして判例も否定説を採る。

第2節 主観的予備的併合への批判

  • 学説による批判

第1 否定説

1 予備的被告の地位の不安定

「原告Xの第一次被告Y1に対する訴(主位請求)が認容されたときは、第二次被告Y2に対する訴(副位請求)については何らの裁判はなされず、Y1に対する勝訴判決が確定すると、解除条件の成就によってY2に対する訴は、遡及的に訴訟係属を失い、判決を受けることなしに終了することになるのであるから、それまでのY2の応訴行為は全く徒労に帰することになるが、このような予備的被告の受くべき不利益は、果してこれを無視して妨げないかどうかが、問題とされねばならない」[5](※注:原文は旧字体)

2 (上訴審における)審判の不統一

否定説は、これらの二つを理由として、これを批判する。

  • 最高裁昭和43年判決

第1 最高裁(最判昭和43年3月8日、民集22巻3号551頁)

1 事案

 X(原告、控訴人、上告人)が、いわゆる譲渡担保の方法によりX所有不動産の登記名義をY2(被告、被控訴人、被上告人)に移転した。XからY2に対して所有権移転登記請求が提訴された。その訴訟の一審係属中に、Y2がY1(訴訟引受人、被控訴人、被上告人)に当該不動産を譲渡、登記を移転したため、XがY1に訴訟を引き受けさせた。Xが、本件訴訟における請求を、主位的にY1に対する移転登記請求、主位請求が認容されなかった場合にY2に対する損害賠償請求と変更した。このため本件訴訟はいわゆる主観的予備的併合となった。

2 判旨

 最高裁は、原審の判断(「XのY2に対する請求は、Y1に対する請求が理由のないことを前提としてなすものであって、いわゆる主観的予備的請求の併合にあたるものであるが、そのような予備的請求の被告とされた者にとつてはその請求の当否についての裁判がなされるか否かは他人間の訴訟の結果いかんによることとなるわけであって、応訴上著しく不安定、不利益な地位に置かれることになり、原告の保護に偏するものであるから、かかる訴訟形式は許されないものと解するのが相当であり、しかも併合された予備的請求はこれを分離するとそれ自体としては条件付訴として不適法なものになるといわねばならない」)を正当とし、Xの上告を棄却した。

なお、最高裁が正当とした原審は、(上訴審の)審判の統一に関することには触れていない。

第3節 最高裁昭和43年判決後の動向

 最高裁昭和43年判決が主観的予備的併合を否定した後も、これについては適法説[6]、不適法説[7]の議論が続いた。さらに下級審裁判例にも主観的予備的併合を認める裁判例が続いた[8]。これらの議論を土台[9]として平成の民訴法改正で民訴法41条が制定された。

第3章 民訴法41条の紹介

 平成8年の民事訴訟法改正(平成8年法109号)により同時審判の申出(民事訴訟法(以下、「法」という。)41条)が可能になった。同条では「共同被告の一方に対する訴訟の目的である権利と共同被告の他方に対する訴訟の目的である権利とが法律上併存し得ない関係にある場合において、原告の申出があったときは、〔裁判所は〕弁論及び裁判は、分離しないでしなければならない。」との規定が新たに設けられた。

 つまり、法41条は、いわゆる予備的被告にも本案判決を下すことによりその地位の不安定を取り除いた。これにより、原告において統一審判の必要性が認められる事案の中で、それが法律上併存し得ない関係にある事案においては、統一審判の保障を可能にした。

 なお、事実上併存し得ない場合にまで同時審判の保障を拡げることは、その適用範囲を不明確なものにし、適当ではないとされている[10]。

第1節 法41条により可能になったこと

第1 法41条により可能になったこと

法41条により弁論及び裁判の併合が規定されたので、既述〔2頁〕の[説例Ⅰの1]及び[説例Ⅰの2のア]のように、原告の請求が「法律上併存し得ない関係」にある場合には、原告のいずれか一方に対する請求が認められるようになり、原告の両負けの危険がなくなった。

第2 法41条制定後の主観的予備的併合の必要性

 法41条が制定された現行法下では、もはや主観的予備的併合の適法性を主張する余地はない[11]とか、現行法が同時審判の申出を認めたことは、主観的予備的併合を否定する趣旨ではないが、「実際上の必要」が同制度によってほぼ充足され、やはりどうしても主観的予備的併合でなければならないのだという場合は、実際上、ほとんどない[12]、とする見解がある。

 しかしながら、次に述べるように法41条には限界があり、いわゆる主観的予備的併合に関する議論はいまだに必要である。

第2節 法41条の限界 ―「法律上併存し得ない関係」に留まる点―

第1 法41条の限界

1 法41条の解決可能範囲の狭さ

 条文上法41条の同時審判の申出ができるのは「法律上併存し得ない」場合であり、「事実上併存し得ない」場合は文言上含まれず、事実上併存し得ない場合では、法41条制定後においても、いまだに原告の両負けの危険が残っている。

2 法41条では解決できない事案

 先に掲げた [井上説例]〔1頁〕、各[説例Ⅱ]及び各[説例Ⅲ]〔3頁〕らは法律上併存し得ない事案ではなく、事実上併存し得ない事案である。したがって、法41条を適用することができない。だから、弁論及び裁判の併合が法律上保障されていない。つまり、各被告に対する請求についての審判が区々になるおそれがある。それゆえ、いまだに原告の両負けの危険が残っている。

 その他にも、最高裁昭和43年判決以後の主観的予備的併合を認めた下級審裁判例の事案中にも「事実上併存し得ない」事案があった。主観的予備的併合による解決方法については後に論ずる〔本節第2及び第3〕ので、ここでは法41条では解決できない事案、すなわち法律上併存し得ない事案ではなく、事実上併存し得ない事案としていくつかの下級審裁判例を紹介する。

【裁判例1】大阪高判S54.12.13(判タ414号99頁)

(1)事案

在日韓国人であるYは、頼母子講[13]〔無尽講〕の講元ないし講親をしていた。Xは、本件講に掛金を計480万円支払ったが、〔配当や貸付等〕なんらの金員の交付等を受けることがなかった。

そこでXが、主位的にY個人に対して、予備的にYを本件講の業務執行人として、講金480万円の返還請求をした。

(2)判旨

 「本件講自体に対する講金返還請求は、Y個人に対する請求の予備的請求としてなされており、主観的予備的請求の性質を帯有するものである。一般に主観的予備的請求は、予備的な被告とされる者の訴訟上の地位を著しく不安定、不利益にするものとして広くこれを許容することはできないが(〔最高裁昭和43年判決〕参照)、本件のように同一人に対し、個人責任を追及する請求とともに組合的講の業務執行人としての講自体に対する請求を予備的に併合して請求することを許しても、前示のような被告の訴訟上の地位を不安定、不利益にする弊害は乏しいからこれを許容して差支えないものと考える。」として、本件の訴訟形態を許容した。

【裁判例2】名古屋地判S60.2.14(判時1173号95頁)

(1)事案

 X、Y1(15歳9月)、Y2(16歳9月)、を含む7名がシンナー遊びをしていた。その最中に、Xのズボンがシンナーで濡れたことに関して、Y2がこれを尿であると冷やかした。そのことから、Y1がこれを確認するためXのズボンにライターの火を近づけたところ、シンナーに引火してズボンが燃え上がりXが火傷を負った。

 Xが、主位的にY1の親権者Y3、Y2の親権者Y4及びY5の三名に対して民法714条に基づき、予備的にY1、Y2の二名に対して民法709条に基づき、損害賠償請求訴訟を提起した。

(2)判旨

「本件は、不法行為をなしたY1、Y2がいずれも未成年であって責任能力を有しないとして、その親権者であるY3、Y4及びY5に対し民法七一四条に基づく損害賠償請求をなし、さらにY1、Y2がいずれも責任能力を有していたと認定される場合を想定して、予備的に右被告両名に対する民法七〇九条に基づく損害賠償請求を併合したものである。ところで、右Y1Y2両名はいずれも未成年者であって訴訟無能力者であるため、右被告両名の訴訟行為はすべてその法定代理人であるY3ないしY4、Y5が行うものである。このように副位被告らの訴訟行為を主位被告らが行うのであるから、本件においては、副位被告が著しく不利益を受けるものとはいえず、かつ不安定な地位に置かれてもやむを得ない事情が認められるというべきである。」として主観的予備的併合を認めた。

【裁判例3】東京高判S47.2.17(高民集25-1-83、判時659号57頁)

(1)事案

 Xが所有する同一土地甲上には、建物乙、建物丙〔建物丙はもともと建物乙に対して増築して建てられた。〕があり、Y1が建物乙及び丙を占有していた。

 Xが、Y1ないしY4を共同被告として、①建物乙につき、乙の所有者がY2、Y3、Y4であるとして、Y1に建物退去及び土地明渡し、Y2ないしY4に建物収去及び土地明渡しを、②建物丙につき、Y1が所有者であるとしてY1を被告として建物収去及び土地明渡しを、③〔追加的請求〕「②」の請求が認められない場合に予備的に、Y2ないしY4が建物丙の所有者であるとして、建物収去及び土地明渡しを、それぞれ請求した。

(2)判旨

 「ところで主観的予備的訴訟が不適法(〔最高裁昭和43年判決〕)とされる理由は、被告が予備的の立場にあるため不当に不安と不利益を強いられるからであると解される。それ故諸般の事情により請求が主観的予備的に併合されても被告が不当に不利益を受けず不安定な立場に置かれてもやむを得ないと認められる場合には右併合は許されると解すべきであり、このように解することは右判例〔最高裁昭和43年判決〕に反しないものと考える。この観点から本件をみるのに、Xは土地所有権に基づき当初からY1とその余のY2、Y3、Y4ら三名を共同被告として建物退去土地明渡請求訴訟を提起するとともにY1に対し右地〔土地甲〕上にある右建物〔乙〕に隣接する別の建物〔丙〕の所有者であるとしてその収去と土地明渡を請求し、その所有者がY1でなくその余のY2、Y3、Y4ら三名と認定されることある場合を予想してY2、Y3、Y4ら三名に対し予備的に右建物の収去による右土地の明渡を併合したものである。このようにして主観的予備的請求を併合されたY2ら三名は、当初から同一土地の明渡という関連する訴訟の共同被告とされているので、右予備的併合による訴訟の被告とされることによつて別訴を提起されるのと比べて特段の不利益を受け不当に不安定な地位に置かれたと認めるべきではない。それ故このような主観的予備的請求は許されると解するのが相当である。」とした。

第2 法41条制定後における依然とした主観的予備的併合の必要性

 これらの裁判例並びに上記[井上説例]、各[説例Ⅱ]、及び各[説例Ⅲ]の事例はいずれも法律上併存し得ない事案ではなく、事実上併存し得ない事案である。従って法41条による統一審判をすることができない。すなわち、併合審理及び審判が法律上保障されていない。つまり、審判が区々になる可能性が存する。したがって、依然として原告の両負けの危険が存する。

 前掲最判昭和43年以降の下級審裁判例(本文中に掲げたもの及び脚注8)では、事案限りで主観的予備的併合を認めることにより統一的な審判を図った。

 しかし、これらの裁判例はいわゆる予備的被告に地位の不安定が認められないか、若しくはその地位の不安定を受けさせても差し支えないと認められる事案に限り、主観的予備的併合を認めたに過ぎない。

これらの下級審裁判例の蓄積に鑑みると、既述の[井上説例]に関して言えば、主位的にY及びZを共同被告(法38条)として、Yを主債務者、Zを連帯保証人として、それぞれに貸金返還債務、保証債務の履行を求め、予備的に、Zを被告として、貸金返還債務の履行を求める請求の定立の仕方を採れば、予備的被告Zは、当初から「関連する訴訟の共同被告とされているので、右予備的併合による訴訟の被告とされることによつて別訴を提起されるのと比べて特段の不利益を受け不当に不安定な地位に置かれたと認めるべきではない」(前掲【裁判例3】東京高判S47.2.17)ので、主観的予備的併合形態を認め原告の両負けを防ぐことができる。

 これで、卒論にこのテーマを選ぶきっかけとなった当初の問題は解決することができた。

第3 法41条制定後における主観的予備的併合によらない統一審判を図る方法の必要性

 これまでみてきたように、[説例Ⅰの1]及び[説例Ⅰの2のア]は法41条により、[井上説例]は主観的予備的併合により統一審判を図ることができた(なお、[説例Ⅱの1]も主観的予備的併合が認められるだろう。)。

しかしながら、既述[説例Ⅱの2]及び各[説例Ⅲ]では、予備的被告に地位の不安定が認められないか、若しくはその地位の不安定を受けさせても差し支えないと認められる事案ではない。

 既に見てきたように、主観的予備的併合が認められないのは、予備的被告に地位の不安定を与えてしまうからである。そして私も、原則として、主観的予備的併合の形態を容認することによって予備的被告に地位の不安定を与えてはならないと考える。だから、[説例Ⅱの2]及び各[説例Ⅲ]では、いまだ統一審判を図ることができない。

そこで次章からは、統一審判を図るための方法論を検討していく。

第4章 統一審判を図るための方法論の検討

 これまでにみてきたように、原告の保護のために統一的な審判が必要になる事案がある。そして主観的予備的併合の形態が統一審判に有用なのは既に見てきた通りである。しかしながら、主観的予備的併合形態により生ずる予備的被告の地位の不安定は是認できない。

 それでは、主観的予備的併合形態によらずとも統一審判を図る方法はないのであろうか。次からは、統一審判を図るその方法論を検討していく。

第1節 準必要的共同訴訟理論の紹介及びそれへの批判

 原告において統一審判の必要性が認められる事案において、統一審判を図る方法論として、まず一つには必要的共同訴訟に関する法40条を準用する方法が提唱されている[14][15]。

 たしかにこの方法によれば、審判の統一を図ることができる。さらに当事者の一人が上訴をすればその効力は全員に対して及ぶ(同条2項)ので、上訴審における審判の統一をも図ることができる[16]。

 しかしながら、この方法は必要的共同訴訟を必要以上に拡大してしまう点に難点がある。さらに被告の一人が上訴した場合に全ての訴訟が上訴審に移行してしまう。元来、主観的予備的併合は原告の便宜の為に原告が申し立てるものであるから、原告が上訴しない場合にまで、原告の請求を含む全ての訴訟を上訴審に移行させてしまう効果を持つ法40条を準用してしまう方法は、処分権主義に反して行き過ぎであり、他にも統一審判を図る方法があるのであれば、法40条を準用する方法まで採る必要はない[17]。

 第2節 訴訟告知による方法の紹介並びにそれへの批判及び限界

第1 訴訟告知により統一審判を図る方法

 原告において統一審判の必要性が認められる事案であっても、訴訟告知(法53条4項、法46条)の方法によって原告の二重敗訴の危険を避けることができるので、主観的予備的併合は不要である、とする見解[18]が散見される。

 しかしながら、これらの見解は、主観的予備的併合不要の根拠とならないばかりではなく、被告知者を保護するために民訴法の解釈として批判されねばならない見解であるので、2つの判例を紹介すると共に一言付言しておく。

第2 二つの最高裁判例

1 最高裁昭和45年10月22日判決(民集24巻11号1583頁)

(1) 事実概要

Y1は、Xよりビルの一室を賃借していた。

 ア 前訴

 A社が、同ビルの所有権はA社に属するとして、Y1に対して本件貸室の明渡し及び賃料相当額の損害金支払を求める訴えを提起した。Y1から訴訟告知を受けたXが補助参加し、上告審までY1と共に同ビルの所有権を争った。

 同ビルの所有権は賃貸の当初からA社に属していたと認定され、Y1の全部敗訴判決が確定した。

 イ 本訴

 前訴が控訴審に係属中に、Xが、Y1及びY2(Y1の連帯保証人)に対して、賃料不払いにより賃貸借契約を解除したとして、未払い賃料及び約定損害金の支払を求める本訴を提起した。

 これに対し、Y1は、賃貸借契約締結時に建設協力保証金名義で支払った300万円の返還を求める反訴を提起した。

 Yらは、Xの本訴請求に対する抗弁として、同賃貸借契約は同ビルの所有権がXに帰属することを要素として締結されたので、同ビルの所有権がAに帰属することが明らかになった以上同契約は無効であり、前訴確定判決の参加的効力が補助参加人であったXにも及ぶので、Xが前訴の判断に反する主張をすることは許されない旨、抗弁した。

 一審は、民訴法旧70条〔現46条〕は、既判力の主観的範囲を拡張する趣旨であり、判決理由中の判断は補助参加人を拘束するものではないとしつつ、同ビルの所有権はA社に属すると改めて認定したうえで、Xの本訴請求棄却、Y1の反訴請求を認容した。Xが控訴。

 二審は、民訴法旧70条〔現46条〕所定の裁判の効力は、訴訟物のみならずその前提たる認定事実や判断にも及び、Xは前訴判決理由中の判断に反する主張をなしえないとし、Xの控訴を棄却した。Xが上告。

(2) 判旨

 最高裁は、「まず、民訴法七〇条の定める判決の補助参加人に対する効力の性質およびその効力の及ぶ客観的範囲について考えるに、この効力は、いわゆる既判力ではなく、それとは異なる特殊な効力、すなわち、判決の確定後補助参加人が被参加人に対してその判決が不当であると主張することを禁ずる効力であつて、判決の主文に包含された訴訟物たる権利関係の存否についての判断だけではなく、その前提として判決の理由中でなされた事実の認定や先決的権利関係の存否についての判断などにも及ぶものと解するのが相当である。けだし、補助参加の制度は、他人間に係属する訴訟の結果について利害関係を有する第三者、すなわち、補助参加人が、その訴訟の当事者の一方、すなわち、被参加人を勝訴させることにより自己の利益を守るため、被参加人に協力して訴訟を追行することを認めた制度であるから、補助参加人が被参加人の訴訟の追行に現実に協力し、または、これに協力しえたにもかかわらず、被参加人が敗訴の確定判決を受けるに至つたときには、その敗訴の責任はあらゆる点で補助参加人にも分担させるのが衡平にかなうというべきであるし、また、民訴法七〇条〔現46条〕が判決の補助参加人に対する効力につき種々の制約を付しており、同法七八条〔現53条4項〕が単に訴訟告知を受けたにすぎない者についても右と同一の効力の発生を認めていることからすれば、民訴法七〇条〔現46条〕は補助参加人につき既判力とは異なる特殊な効力の生じることを定めたものと解するのが合理的であるからである。

 そこで、本件についてみるに、原審が適法に確定したところによれば、訴外Aが、本件建物は同会社の所有であると主張して、Y1に対し、その建物の一部である本件貸室の明渡などを請求した別件訴訟において、Xは、その訴訟が第一審に係属中に、Y側に補助参加し、以来終始、本件建物の所有権は、XがY1に本件貸室を賃貸した昭和三三年五月三一日当時から、訴外Aにではなく、Xに属していたと主張して、右請求を争うY1の訴訟の追行に協力したが、それにもかかわらず、Y1は、その訴訟の結果、本件建物の所有権は、右賃貸当時から、訴外Aに属し、Xには属していなかつたとの理由のもとに、全部敗訴の確定判決を受けるに至つたというのである。

 してみれば、右別件訴訟の確定判決の効力は、その訴訟の被参加人たるY1と補助参加人たるXとの間においては、その判決の理由中でなされた判断である本件建物の所有権が右賃貸当時Xには属していなかつたとの判断にも及ぶものというべきであり、したがつて、Xは、右判決の効力により、本訴においても、Y1に対し、本件建物の所有権が右賃貸当時Xに属していたと主張することは許されないものと解すべきである。

 以上と同旨に出た原審の判断は正当であつて、原判決に所論の違法はない。なお、民訴法七〇条〔現46条〕所定の判決の補助参加人に対する効力に関する所論引用の大審院判例(昭和一四年(オ)第一二〇五号・同一五年七月二六日判決・民集一九巻一三九五頁)は、前記判示の限度において、変更すべきものである。したがつて、論旨は、ひつきよう、独自の見解に立つて原判決を非難するものにすぎず、採用することができない。」として、補助参加人は前訴の確定判決のその主文のみならず、判決理由中の判断にも拘束されるとした。

2 最高裁平成14年1月22日判決(判時1776号67頁)

(1) 事実概要

 Yはカラオケボックスの施主であり、Zは同カラオケボックス建築の請負業者である。そしてXは、同カラオケボックスにテーブル及びいす等(本件商品)を納入した家具販売を業とする会社である。

ア 前訴

 Xが、Zの注文により本件商品を納入したとして、Zに対して、残代金約550万円を請求した。Zが注文者はZではなくYであると争ったため、XがYに対して訴訟告知をしたがYは補助参加しなかった。その後、前訴はXの請求棄却で確定した。その理由中において、本件商品はZが購入したのではなく、Yが購入したものであると認定された。

イ 本訴

 Xが、Yに対して本件商品代金約100万円の支払いを請求した。

 原審は、参加的効力が判決理由中の事実認定や法律判断にも及ぶ旨を述べる前掲最高裁昭和45年判決を引用し、訴訟告知による参加的効力(旧民訴法78条、70条〔現53条4項、46条〕)により、Yは、前訴理由中の判断である本件商品の買主がYであるとの判断と異なる主張をすることは許されないとして、本件商品の買主がYであるか否かという点について認定することなく、Xの本件商品代金請求を認容すべきとした。Yが上告。(ここで注意的に書き記すが、Zが買主でないからといって必ずしもYが買主であるということはできない。例えば、Z又はYが本件商品の買い付け代金の融資を受ける目的で、融資者が買主となりこの融資者から目的物のリースないし割賦払いで転売を受けるなど様々なケースが想定できるのである。[19])

(2) 判旨

これに対して最高裁は、「3 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。

(1)旧民訴法78条〔現53条4項〕,70条〔現46条〕の規定により裁判が訴訟告知を受けたが参加しなかった者に対しても効力を有するのは,訴訟告知を受けた者が同法64条〔現42条〕にいう訴訟の結果につき法律上の利害関係を有する場合に限られるところ,ここにいう法律上の利害関係を有する場合とは,当該訴訟の判決が参加人の私法上又は公法上の法的地位又は法的利益に影響を及ぼすおそれがある場合をいうものと解される(最高裁平成12年(許)第17号同13年1月30日第一小法廷決定・民集55巻1号30頁参照)。

 また,旧民訴法70条〔現46条〕所定の効力は,判決の主文に包含された訴訟物たる権利関係の存否についての判断だけではなく,その前提として判決の理由中でされた事実の認定や先決的権利関係の存否についての判断などにも及ぶものであるが(〔前掲最高裁昭和45年判決〕参照),この判決の理由中でされた事実の認定や先決的権利関係の存否についての判断とは,判決の主文を導き出すために必要な主要事実に係る認定及び法律判断などをいうものであって,これに当たらない事実又は論点について示された認定や法律判断を含むものではないと解される。けだし,ここでいう判決の理由とは,判決の主文に掲げる結論を導き出した判断過程を明らかにする部分をいい,これは主要事実に係る認定と法律判断などをもって必要にして十分なものと解されるからである。そして,その他,旧民訴法70条〔現46条〕所定の効力が,判決の結論に影響のない傍論において示された事実の認定や法律判断に及ぶものと解すべき理由はない。

(2)これを本件についてみるに、前訴におけるXのZに対する本件商品売買代金請求訴訟の結果によって,YのXに対する本件商品の売買代金支払義務の有無が決せられる関係にあるものではなく,前訴の判決はYの法的地位又は法的利益に影響を及ぼすものではないから,Yは,前訴の訴訟の結果につき法律上の利害関係を有していたとはいえない。したがって,Yが前訴の訴訟告知を受けたからといってYに前訴の判決の効力が及ぶものではない。しかも,前訴の判決理由中,Zが本件商品を買受けたものとは認められない旨の記載は主要事実に係る認定に当たるが,Yが本件商品を買い受けたことが認められる旨の記載は,前訴判決の主文を導き出すために必要な判断ではない傍論において示された事実の認定にすぎないものであるから,同記載をもって,本訴において,Yは,Xに対し,本件商品の買主がYではないと主張することが許されないと解すべき理由もない。

4 以上によれば,前訴の判決の理由中に本件商品はYがXから買い受けたことが認められる旨の記載があるからといって,前訴の判決の効力がYに及び,Yが本件商品の買主であるとして売買代金の支払を認めるべきものとした原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は理由があり,原判決は破棄を免れない。そして,Yの本件商品の売買代金支払債務の有無について更に審理を遂げさせる必要があるから,本件を原審に差し戻すこととする。」として原判決を破棄し、原審に差し戻した。

第3 訴訟告知による方法の限界

 訴訟告知がなされた場合であっても、被告知者は「訴訟の結果について利害関係を有」(法42条)しない場合[20]には、当該訴訟は被告知者にとって、法律上全く無関係な他人間の紛争であり、参加する法律上の意味がないし、参加する義務もない[21]。

 例えば、[説例Ⅲの2]〔3頁、旅客機の例〕において、Aの相続人(X)が、ある乗客1名(Y1)に対して、Aの殺害者であるとして、民事損害賠償請求訴訟を提起した。そしてXは、残りの乗客99名(Y2ないしY100)に対して訴訟告知をした。この際にY2からY100は、XとY1間の訴訟に参加するであろうか。

 XのY1に対する請求が棄却されて、Xは次に、Y2に対して訴訟提起をし、同様にY3からY100に訴訟告知した。以降、同様に物事が進み最後に残ったのがY100であった。この際、Y100はAを殺害したのがY1からY99ではないと認定された各前訴判決の存在を理由として、A殺害の責を負わされてしまうのであろうか。これではあまりにも不当であり、被告知者の保護にかける。

思うに、訴訟告知を受けた者に適用される法46条(法53条4項)は、補助参加人に対する裁判の効力を定めたものである。そして「補助参加の制度は、他人間に係属する訴訟の結果について利害関係を有する第三者〔が〕、被参加人を勝訴させることにより自己の利益を守るため、被参加人に協力して訴訟を追行することを認めた制度である」(前掲最高裁昭和45年判決)。だから、「参加することができる第三者」(法53条1項)の解釈は、訴訟告知を受けた者が、他人間の訴訟に参加することが「自己の利益を守る」ことに直結することを把握できる場合に限定して解釈されねばならない。そして、被告知者にとって、把握可能な他人間の訴訟の「判決の理由中でされ〔うる〕事実の認定や先決的権利関係の存否についての判断とは,〔他人間の訴訟の〕判決の主文を導き出すために必要な主要事実に係る認定及び法律判断」(前掲最高裁平成14年判決)のみである。他人間の訴訟の判決主文を導き出すために必要ではない判決理由中の判断などは、被告知者としては把握ないし予測することができない。

それゆえに、自己とは全く無関係な他人間の訴訟の判決理由中の判断が被告知人に及ぶというのは乱暴である。だから、「参加することができる第三者」(法53条1項)とは、民法等の実体法に条文上求償権等が明記されている場合(例えば、貸金債権者が連帯保証人に対して保証債務の履行を請求した場合に、連帯保証人が主債務者に訴訟告知をした場合、又は、Xが、土地工作物の占有者に対して民法717条1項の責任を追及した場合に、Xが同所有者に訴訟告知をした場合等)に限定して狭く解釈しなければ、被告知者の保護に欠ける[22]。

 このように、原告において統一審判が望まれる事案において、これを訴訟告知による方法で解決を試みることは、原告の希望がかなわないだけではなく、被告知者の保護の面からも前訴判決の判断に被告知者を拘束させることは許されない。

第3節 具体的方法の検討 ―法41条を類推ないし拡張する方法―

 前二節で主観的予備的併合によらずして統一審判を図るために提唱されている方法を見てきたが、これらの方法にはそれぞれ批判がある。そこで私は、竹下守夫先生[23]も言われておられるように、法41条を類推ないし拡張する方法を提唱したい。

そして、その構成として次に紹介する主観的順位的併合に賛成する。福永有利先生[24]は、主位請求が認容された場合に予備的請求には本案判決が下されない主観的予備的併合ではなく、副位請求についても必ず判決がなされる主観的順位的併合を提唱されていた。さらに、福永先生[25]は、旧法59条〔現38条〕に2項を付け加える形で、「複数の被告に対する請求が、その請求またはその原因の主張において両立することができないものであるときは、順位をつけて訴えることができる。裁判所は第一順位の請求を認容するときは、第二順位の請求を棄却する」という規定を提唱されていた。

 なお、旧法186条〔現246条〕の解釈問題として、いわゆる予備的被告の地位の不安定を取り除く方法を、早くから提唱されていたものとして、井上先生の文献[26]があるので紹介しておく。

第1 自説の積極的理由付け

 まず、自説の理由付けを試みる。

 第一に、民事訴訟の実際において、原告が、被告として訴えを提起すべき相手方が誰であるかを訴訟の審理を待たずにあらかじめ確定することに困難を感じる事例が稀ではない[27]。

第二に、法38条(共同訴訟)が、訴訟の目的である権利又は義務が数人について同一の事実上及び法律上の原因に基づくときは、その数人は共同訴訟人として訴えられることができる旨規定している。そして、共同訴訟は、「複数の事件が併合審理されることによって、当事者及び裁判所にとって時間・労力・費用の節約ができ、とくに各共同訴訟人と相手方との間の請求が相互に関連性がある場合には、共通の争点についての審理の重複を避け、裁判の矛盾・抵触を防止できるという利点がある[28]。」

第三に、最高裁(最判昭和63年1月26日(民集42巻1号1頁))が、訴えを提起することについて「訴えを提起する際に、提訴者において、自己の主張しようとする権利等の事実的、法律的根拠につき、高度の調査、検討が要請されるものと解するならば、裁判制度の自由な利用が著しく阻害される結果となり妥当でないからである」として、訴訟提起を広く認めている。

 第四に、一番重要なことであるが、主位請求に全部認容判決が下された場合に副位請求に棄却判決を下さない主観的予備的併合の訴訟形態ではなく、主位請求が認容された場合には副位請求を棄却し、主位請求が棄却された場合には副位請求を認容する主観的順位的併合の構成を採れば、いわゆる予備的被告にも本案判決が下される。このことにより、いわゆる予備的被告の地位の不安定を取り除くことができる。

 これらにより、自説の理由付けができる。

第2 法41条を法律上併存し得ない事案「のみ」と限定した場合の同条の存在意義

 「〔法〕41条の文言上は、ただ『法律上併存し得ない関係にある場合』と書いているだけ」である。竹下先生[29]はこう言われる。

これに対して、同条の法律上併存し得ない関係にある場合というのは、法律の規定によって両立しない関係になっている場合を想定しており、ここで言う「法律上」を事実上も法律上に含まれると解釈することは、立法過程からするとかなり無理があるとの見解[30]及び同条は限定的な解釈になるとする見解[31]がある。

 たしかに同条は、主観的予備的併合をめぐる議論を土台として生まれたものであり[32]、その議論の結果が「法律上併存し得ない」場合という厳格な要件に搾ったのだとの意見もあろう。

 しかし、高田裕成先生[33]が「原告のある種の利益〔中略〕は手続上保護されるべきであるという立法的決断をしたのが新法ということであろう。とすれば、法律上併存しない請求をする場合以外の状況においても保護に値する当事者の利益を抽出することを試みる可能性を開いたという評価も十分可能といえそうである」とし、「同条〔法41条〕は、さしあたり従来から問題となっていた『主張する権利が法律上併存しない場合』という局面について対処する立法をしたという理解をすることもあながち不可能ではな」いだろうと言われるように、拡張することが許されないわけではない。

そして、実は、原告において統一審判の必要性がある事案でそれが法律上併存し得ない事案のみであるならば、法41条は必要ない。これらは従前から存在した訴訟告知による方法により、原告としては両負けを防ぐことが、既に、可能だったのである。したがって、法41条が適用される範囲を法律上併存し得ない事案のみと限定した場合、法41条はその存在意義を失ってしまうのではなかろうか(例えば、法41条によった場合、原告は必ず片一方には負けるのでその分の訴訟費用の負担が必ずかかる。しかし、訴訟告知の方法によれば必ずしもそうはならない(尤も一回の訴訟で解決できるメリットはある)。これに対して、事実上併存し得ない事案においては、本章第2節で述べたように、訴訟告知によっては、原告において必ずしも両負けを防ぐことができないので、主観的予備的併合又は法41条の類推ないし拡張が必要になるのである。)。

第3 法50条3項で法41条が準用されていること[34] ―法50条1項が事実上併存し得ない事案をも含むこと[35]―

 義務承継人の訴訟引受けを定める法50条1項は、当事者恒定主義を採用せず、確定判決の効力が口頭弁論終結後の承継人にしか及ばない(法115条1項3号)日本の民訴法において、訴訟の係属中に第三者がその訴訟の目的である義務を承継したときに、裁判所が、当事者の申立てにより、決定で、その第三者に訴訟を引き受けさせることができる制度である。そしてこの承継人は訴訟参加を強制させられる[36]。

 例えば[37]([説例Ⅳ]とする。)、X(原告)が、Y(被告、被承継人)に対して目的物の返還請求を求めた訴訟の係属中に、Yが目的物をZ(承継人)に売り渡したとする。この場合に、XがZに対して訴訟承継(法50条1項)を申し立てれば、法50条3項により41条1項及び同3項が準用されるため、XY間の訴訟とXZ間の訴訟が統一的に審判されるのである。

 この引受承継は通常共同訴訟である[38]ため、XY間請求とXZ間請求は、もちろん別訴によることも可能である。しかし、Xが別訴を選んだ場合、XY間訴訟では目的物がYからZに売買を理由に移転したとの理由でYに対する目的物返還請求が棄却され、XZ間訴訟では目的物がYからZに売買移転していないとの理由でZに対する目的物返還請求が棄却され、Xが「両負け」することもありうる。このXの両負けを防ぐために、法50条3項は、法41条1項及び3項を準用しているのである。

 訴訟引受けの法律上併存し得ない例として、訴訟係属中の免責的債務引受け[39]等が挙げられるが、訴訟引受けの例として他にも債権譲渡[40]が挙げられている。この債権譲渡の例は、法律上併存し得ない場合ではなく、事実上併存し得ないものである。そして、上述[説例Ⅳ]におけるYZ間の売買の有無(又は売買の有効無効[41])なども、事実上併存し得ない場合である(法律上併存し得ない事案と事実上併存し得ない事案の区別の不明確性について後述本節第4)。

 このように義務承継人の訴訟引受け(法50条)においては、事実上併存し得ない事案であっても同条3項により法41条1項及び3項が準用され、統一審判が保障されている。

 このように、統一審判を保障する法41条1項及び3項は、事実上併存し得ない事案を含む義務承継人の訴訟引受け(法50条)において準用されている(同法3項)。

 そうなのであるから、この点からみても、同時審判の保障(法41条1項)を法律上併存し得ない事案のみにしか認めない理由はないように思われる。

第4 法律上併存し得ないものと事実上併存し得ないものの区別の不明確性

1 法律上併存し得ないものと事実上併存し得ないものの区別の不明確性

(1)債務引受を例にして

例えば、一般的に債務引受は法律上併存し得ないものとされている[42]。これに対して竹下先生[43]は「債務引受が有効と認められるか、無効と認められるかということは、事実認定にかかってくる」のではないかと言われる。私も、竹下先生と同様の疑問を持つ。

この点に関して、法41条の「法律上併存し得ない」について厳格な態度を取られる[44]柳田幸三先生も、債務引受については明確な条文はない旨認められる[45]。その上で、「免責的な債務引受が成立した場合には、旧債務者は免責されて、新債務者のみが責任を負うという条文があるのと同じわけです。ですから、そういう場合は当然含まれるということになるだろうと思いますけれども、どちらが契約したかというのはそういうことではなくて、まさに事実認定そのものの問題ですね。そういうものは入らない[46]」のだと言われる。この発言の趣旨は、[説例Ⅳ]の基本記号に則して言うと、YZ間の事実認定に関するものは、法律上併存し得ないものになり、XY間(及びXZ間)の事実認定に関するものは、法律上併存し得ないものではないのだ、ということであろう。

しかしながら、紛争解決の相対性の原則により、XY間訴訟とXZ間訴訟が別訴であった場合、それぞれの訴訟においてのYZ間の事実認定の矛盾は起こりうるし、また起こってもなんら問題はないのであるから、事実認定がYZ間(相被告間)に関するがゆえをもって、それを法律上併存し得ないものと言い切るのは難しい。

逆に言えば、XY間(又はXZ間)の事実認定にかかるものを、それが法律上併存し得ないものであるからといって、統一審判の保障の枠外に置く理由にはならない。むしろ、事実上併存し得ないものの方が、各当事者間の公平の見地から、統一審判の保障を第一義的に受けるべきではなかろうか。

(2)「ただ一つの契約」を例にして

 竹下先生[47]が、[説例Ⅱの1]〔3頁〕を例にして、「契約は一つしかないので、法律上個人と法人と両方と契約をしたということはあり得ない」から、「こういう場合も見方によっては法律上両立し得ないと言えなくもない」のだと言われる。

 この事例は、先ほどの[説例Ⅳ]の基本記号をベースにして申すと、YZ間の事実認定に関するものではなく、XY間(及びXZ間)に関する事実認定の問題であるから、一般的には、事実上併存し得ないものとなろう。

 しかしながら、竹下先生のご指摘ももっともではなかろうか。

 この契約をした相手が個人か法人かわからない[48][説例Ⅱの1]と契約当事者が他にも存するかもしれない[説例Ⅱの2]を比べてみると、前者においては、必ずどちらか一方との契約が認められる。それに対して後者では、契約当事者が他にもいる可能性が存するので、必ずどちらか一方との契約が認められるわけではない。

裁判所は、同時審判の申出がなされている場合、弁論及び裁判の併合を強制される。しかし、だからといって、必ずや片一方に対する請求認容判決を下すことまでを強制されているわけではない。両方に対する請求を棄却することも、もちろんできるのである。それゆえ、他の契約主体の存在の可能性は、両請求棄却判決の理由にはなりえても、弁論及び裁判の併合を保障してはならない理由にはなりえない。

(3)民法717条を例にして[49]

[説例Ⅰの1]〔2頁〕をベースにして、事案を加工してみる。所有者Zが、当該建物の賃貸借に関する事項を含めて、不動産屋(Y2)に当該不動産の占有に関する事項を全てまかせていたとする。そして店子(Y1)がY2から当該不動産を借りていたとする。

この際に、「占有者」又は「所有者」の責任かは法律上併存し得ないものであるので、この点に関しては同時審判が保障される。しかし、その責任が「占有者」にあったとして、Y1又はY2のどちらに責任があったのかは、法律上併存し得ない事項ではないので、怪我を負ったXとしてはどのように請求を定立すればよいのであろうか。

確かに、現実的には、裁判所が、Y1、Y2及びZの三者を含めた弁論及び審判の併合をしてくれるではあろう。しかし、その保障はあくまでもない。

2 当事者の主張の仕方により法律上併存し得ないものと事実上併存し得ないものが簡単に変容すること

 法律上併存し得ない事案と事実上併存し得ない事案の違いは紙一重である。既に述べた説例にもう一つ加えてその違いの紙一重性を見てみる。

まず、前述[説例Ⅰの2のア]〔3頁〕において、原告Xが、本人Aに対して目的物の引渡しを請求し、Bが無権代理人であり、表見代理も成立しないと認定される場合に備えてBの無権代理責任(民法117条1項)を追及する場合は、間違いなく法律上併存し得ない事案であり、法41条が適用される。すなわち、統一審判が保障される。

さらに一つ説例[50]を加えよう([説例Ⅰの2のイ]とする)。原告Xが、本人Aに対しては目的物の引渡しを請求し(XのAに対する請求原因事実は、A代理人Bの代理権の存在)、A代理人Bが無権代理人であり、表見代理も成立しないと認定される場合に備えて、Bに対して不法行為に基づく損害賠償請求(民法709条(無権代理責任(民法117条1項)の追及ではない))をする場合は、法律上併存し得ない事案ではなくなる。

 この[説例Ⅰの2のイ]で、XのAに対する請求が棄却され、XのBに対する不法行為に基づく損害賠償請求(民法709条)が認容されるときは、そのBの不法行為責任の前提判断にBの代理権の不存在という、XのAに対する請求原因事実とは法律上併存し得ない判断[51]が含まれることになる。

 このように、全く同一の事実状態において、原告の主張が違うだけで、法律上併存し得ないものになるか事実上併存し得ないものになるかが異なってくる。つまり、原告の主張が異なるだけで、裁判所が、弁論及び裁判の併合を強制されるのかどうかが、簡単に異なってくる事案もあるのである。言い換えれば、原告の意思一つで裁判所に対して弁論及び裁判の併合を強制できるのである。両者の違いはいわば紙一重の差でしかない。

 このように、原告の主張が異なってくるだけで裁判所が弁論及び裁判の併合を強制されることになるのである。だから、この点からも、事実上併存し得ない事案においても統一審判を保障しても差し支えないとする自説の補強ができる。

3 小括

 以上を簡単にまとめると、法律上併存し得ないものと事実上併存し得ないものの区別が不明確であること、法律上明確に区別をすることができるものの内部に事実上併存し得ないものがでてくる事案も想定されること及び当事者の主張の仕方により法律上併存し得ないものと事実上併存し得ないものが簡単に変容する場合があると言える。

これらからもわかるように、法律上併存し得ない事案と事実上併存し得ない事案の間に実際上の大差はないのである。法律上併存し得ない事案に統一審判の保障をした法41条のその立法趣旨は「原告の両負けを防ぐ」ことなのである[52]から、事実上併存し得ない事案においても統一審判を保障すべきである。

第5章 上訴審の統一について

第1 上訴審への移審後の諸問題について

1 上訴の有無による上訴審の不統一について

 敗訴当事者の上訴の有無により、結果としての審判の不統一は生ずる。しかし、それは本来処分権のレベルの問題であり、決定的な批判には当たらない。

2 原告が控訴しておかなければならないことについて

送達の前後により、例えば、XがY1に対して敗訴、Y2に対して全部勝訴した場合において、判決書の送達が、X、Y1、Y2の順になされた場合、原告が控訴しておかなければならない[53]事態が生ずる(参照:法285条)。しかし、それは仕方がないとして片付けてもよいであろう。そしてこの問題は、本来の法41条の事案、すなわち法律上併存し得ない事案でも起こることである。

ただし、あえて論を進めるならば、私は両被告は並列的[54]に位置していると考えるので、仮に原告が片一方の被告に全面勝訴して敗訴被告が控訴した場合においても、法41条がそもそも「原告の両負けの危険を防ぐ」趣旨であるため、原告はあたかも付帯控訴〔※〕のように293条を類推適用できると解釈するのが当然であると、考える。上述の例で言えば、Y2が控訴した場合、XはY1に対して293条を類推適用して控訴〔※〕できるとすべきである。〔※:ここの用語はとりあえず使用する。〕

3 主位請求(第一請求)認容、予備請求(第二請求)棄却の場合の原告の控訴の利益について

第一請求全部認容、第二請求棄却の場合に、原告に第二請求につき控訴の利益が認められるだろうか。通説的見解である形式的不服説によれば、原告は第二請求について控訴できないであろう。この際に控訴できるのは、第一被告だけである。

この場合に、第二請求については一審で原告が敗訴し、原告は第二請求について控訴できないので、第二請求については一審で原告敗訴が確定してしまう。そして、第一請求につき控訴審で原告が敗訴すると、原告の「両負け」が生じうる。

このような場合にも、上記2と同様にすべきである。

4 小括

 とりあえずは、第一審だけでも統一審判がなされれば、それだけでも原告にとって利益があり、上訴率及び破棄率の実際からみて、この第一審の機能には少なからざるものがある[55]。

 本章については、まだまだ検討不足な面は否めないが、他日を期すことにしたい。

第6章 まとめ

以上に見てきたように、複数被告らに対する請求が、法律上併存し得ない場合のみにとどまらず、事実上併存し得ない場合においても、原告において統一審判が必要な事案がある。

それは訴訟経済の面からみても、例えば、原告(X)が複数被告(Y1、Y2)に対する請求を別訴によった場合、Y2は、XとY1間の訴訟にも証人等として関与しなければならない(法190条)。別訴により2回も裁判に関与させられるより1回で済んだほうが、訴訟経済の面からみて、裁判所にとっても被告とされる者らにとっても便宜であろう。

「事実上併存し得ない場合」においても、原告の利益のために、法41条を類推ないし拡張して統一審判を図る必要がある。そして、予備的被告に本案判決が下されない可能性がある主観的予備的併合ではなく、主観的順位的併合の構成を採れば、被告とされる当事者全員に対して本案判決を下すことができる。これにより、いわゆる予備的被告の地位の不安定を取り除くことができる。

本稿でみてきたように、原告において統一審判が望まれる事案において、それが「事実上併存し得ない場合」には、それを訴訟告知及び法41条又は主観的予備的併合によっては解決できない事案がある。それゆえ、法41条を類推ないし拡張して統一審判を図る方法により、統一審判を保障すべきである。

以 上


[1] 井上治典『アプロウチ&Qで学ぶ設題民事訴訟法』(信山社、2005)9頁

[2] 金銭消費貸借(民法587条)の要件事実は、「金銭授受」及び「返還約束」である。Xはこの2つの証明責任を負う。この説例におけるXは、Yを債務者と主張するには金銭授受及び返還約束の立証が難し(民法93条但書により契約が無効となる。)く、Zを債務者と主張するには返還約束の立証が難しい。

[3] 梅本吉彦『民事訴訟法』(信山社、第三版、2007)650頁

[4] 竹下=青山=伊藤編「研究会新民事訴訟法」ジュリスト増刊(有斐閣、1999)69頁〔竹下発言〕参考

[5] 中田淳一「訴の主観的予備的併合の許否」法学論業64巻2号131頁(1958)

[6] 最高裁昭和43年判決後の適法説論評として、井上治典「訴の主観的予備的併合の適否」民商59-4-118(1968)、法41条制定後の適法説論評として、高田裕成「同時審判の申出がある共同訴訟」三宅ほか編『新民事訴訟法大系 理論と実務 第一巻』(青林書院、1997)172頁等がある。

[7] 齋藤秀夫『民事訴訟法概論』(有斐閣、1969)462頁等

[8] 肯定例として、松江地判S45.3.25(行集21-3-603)、東京高判S47.1.27(高民集25-1-29、判時657号53頁)、広島高判S51.3.1(行集27-3-297)、神戸地判S52.3.29(訟務月報23-3-617)、東京地判S54.8.16(判タ402号125頁)、東京地判S55.2.8(判タ422号117頁)、大阪高判S61.3.14(判タ611号89頁)等がある。 なお、否定例として、長野地判S50.11.29(判時814号110頁)、静岡地裁富士支部判決S63.4.19(判時1292号134頁)等がある。

[9] 前掲注4 61頁以下等

[10] 法務省民事局参事官室編『一問一答新民事訴訟法』(商事法務研究会、1996)59頁

[11] 伊藤眞『民事訴訟法』(有斐閣、第3版補訂版、2005)586頁

[12] 中野貞一郎『解説新民事訴訟法』(有斐閣、1997)70頁

[13] 互助的な金融組合。組合員が一定の掛金を出し、一定の期日に抽籤または入札によって所定の金額を順次に組合員に融通する組織。新村出編『広辞苑』(岩波書店、第六版、2008)

[14] 松浦馨「訴えの主観的予備的併合の適否」ジュリスト300号252頁(1964)253頁は、「わたくしは〔中略〕主観的予備的併合を通常共同訴訟として取扱わなければならないとされる前提に疑問を感」じるとされ、「〔主観的予備的併合〕が必要的共同訴訟に近い取扱いをするための明文もないが、〔中略〕通常共同訴訟によらねばならぬ明文もない」とされ、準必要的共同訴訟説に立っておられると思われる。

[15] 納谷廣美『民事訴訟法』(創成社、1997)441頁

[16] 上訴審の統一の為に法40条を準用すべきとするものとして、梅本吉彦 前掲注3 652頁

[17] 旧62条〔現40条〕までを準用する必要はないとするものとして、福永有利「共同訴訟と訴訟参加の規律(下)」NBL558号57頁(1994)58頁

[18] 木川統一郎「主観的予備的併合不要論」判タ778号4頁(1992)、 ペーター・ゴットバルト╱イェンス・アドルフセン、レーゲンスブルク〔芳賀雅顯訳〕「主観的予備的併合の適法性」法律論業69巻6号67頁(1997)等

[19] Y代理人の上告理由より。

[20]「訴訟の結果についてYが利害関係を有していた」とする評釈として、松本博之「旧民事訴訟法七0条の効力の客観的範囲」民商127-1-132(2002)等がある。

[21] 猪股孝史「訴えの主観的予備的併合の再検討」桐蔭法学2巻1号65頁(1995)133頁は「いかに被告知人が補助参加の利益をもつとはいっても、参加しうるだけで、義務ではない以上、参加しなかったということだけで不利益を課されるいわれはないはずである。」と言われる。

[22] 猪股孝史 前掲注21 134頁参照

[23] 前掲注4 64頁〔竹下発言〕

[24] 福永有利 前掲注17 58頁

[25] 福永有利 前掲注17 59頁

[26] 井上治典「訴えの主観的選択的併合の適否」判タ281号(1972)〔『多数当事者訴訟の法理』(弘文堂、1981)181頁所収、194頁〕は、旧法186条の解釈問題として、主観的予備的併合(及び主観的選択的併合)における原告の申立てを「主位請求認容、予備請求棄却」のワンセットか「主位請求棄却、予備請求認容」のワンセットであるととらえ、裁判所は、主位請求認容の場合でも予備的請求に棄却判決を下すことができると解釈することによって、いわゆる予備的被告にも本案判決を下す方法を提唱されていた。

[27] 中村修三「訴の主観的予備的(または選択的)併合の適否」本井=中村編『民事実務ノート第2巻』94頁(判タ社、復刻版、1988)94頁、齋藤哲「主観的予備的併合再考」東北学院大学法学政治学研究所紀要第16号184頁(2008)155頁

[28] 三宅他編『注解民事訴訟法Ⅰ』356頁〔徳田和幸〕(青林書院、2002) 

[29] 前掲注4 69頁〔竹下発言〕

[30] 前掲注4 70頁〔柳田発言〕

[31] 前掲注4 70頁〔福田発言〕

[32] 前掲注4 61頁以下等

[33]  高田裕成 前掲注6 195頁の脚注(60)

[34] なお、齋藤哲 前掲注27 158頁は「〔主観的順位的併合訴訟が〕主位被告に加え副位的被告に対する請求を併合した訴訟形態は、係属中の訴訟に第三者に対する訴訟引受けが申立てられた場合と極めて酷似しており、民訴法50条3項を準用すべきである」と言われる。しかし、この見解は、法50条1項が係争物を承継した場合であるという点において、類推ないし準用の基礎の論証に欠けると思われる。

[35] 前掲注4 71頁〔竹下発言〕参照

[36] 秋山ほか編『コンメンタール民事訴訟法Ⅰ』(日本評論社、第2版、2006)494頁

[37] 三宅他編『注解民事訴訟法Ⅰ』508頁〔日比野泰久〕(青林書院、2002)は、法50条の訴訟引受けの典型例として、所有権確認請求の目的物件を第三者が取得する場合及び建物収去土地明渡請求訴訟中に建物を第三者が取得する場合などを挙げている。

[38] 高橋宏志『重点講義 民事訴訟法 下』(有斐閣、補訂版、2006)433頁

[39] 前掲注36 503頁、法務省民事局参事官室 前掲注10 64頁

[40] 上北武男「訴訟参加及び訴訟引受け」三宅ほか編『新民事訴訟法大系 理論と実務 第一巻』197頁(青林書院、1997)219頁

[41] 後にも述べるが、「売買の有効無効」は法律上併存し得ない場合になりうるかもしれないが、「売買の有無」になると、これは事実上併存し得ない場合であろう。

[42] 前掲注36 503頁、法務省民事局参事官室 前掲注10 64頁

[43] 前掲注4 71頁〔竹下発言〕

[44] 前掲注4 70頁〔柳田発言〕

[45] 前掲注4 71頁〔柳田発言〕

[46] 前掲注4 71頁〔柳田発言〕

[47] 前掲注4 69頁〔竹下発言〕

[48] Aが複数の法人の代表者である場合には、その法人全てを共同被告とすれば共同被告の内のいずれかが契約当事者である。

[49] 民法717条を基にした優れた事案説例として、猪股孝史 前掲注21 150頁がある。一読を勧める。

[50] 齋藤哲 前掲注27 169頁参照

[51] 前掲注4 69頁〔伊藤発言〕は、法律上併存し得ないとは「代理権授与行為のような同一事実の存否を前提として、相矛盾する法律効果〔が発生すること〕を問題にしている」と言われる。

[52] 法務省民事局参事官室 前掲注10 59頁

[53] 高田裕成 前掲注6 186頁

[54] 西村宏一「訴の主観的・予備的併合」兼子編『実例法学全集 民事訴訟法 上巻』(青林書院、1963)65頁参照

[55] 井上治典 前掲注6 125頁


平成21年1月26日

民訴ゼミ 卒論(第8稿)

捧 大地

 卒論の提出締め切り日までに書き上げることができませんでしたが、旧自説には弱点というより最早「欠陥」というべき点があり、自説を次のように改めたいと存じます。

 独りよがりな見解の部分が存するかと思いますので、ご考査いただくことができましたら、たいへん幸せです。

第4章

 第4節 予備的併合と構成したうえでの主観的順位的併合

 当初、私は、前節で述べた民訴法41条を類推ないし拡張する方法(以下、「旧自説」とする。)を採用すべきと考えていた。この方法は訴訟運営として理想的な指針ではある。しかしながら、あくまで「べき論」であり、原告として望まない結果、すなわち弁論の分離の可能性があり、さらにその弁論の分離が、容易に、予測されうる。従って、依頼人の利益を追求しなければならない訴訟代理人を志す者が、安易に採るべき方法ではない。

 そこで、私は、旧自説を捨て去り、予備的併合と構成したうえでの主観的順位的併合を採用すべきと提唱する。

なお、主観的順位的併合という用語が明確に定義付けされないまま使われていると思われる[1]。ここでは、「予備的併合と構成したうえでの主観的順位的併合」を「予備的請求のその訴えは、その主位的請求の確定的認容を解除条件として訴訟係属を生ずるが、その判決の申立ては主位的請求棄却の判決がなされることを停止条件とする予備的併合である。そのうえで、判決が、主位請求を認容するときは、予備的請求についても棄却の判決をするもの[2]」と定義する。

第1 単純併合構成における弁論が分離されうる危険

 法41条は「単純併合」である[3]。当たり前のことであるが、判決が区々になること及び弁論が分離されることというのは、審判を受ける請求を2本同時に立てているからこそ、判決の区々及び弁論の分離が起こりうるのである。

 そして、当たり前のことであるが、審判を受ける請求を1本しか立てなければ、判決の区々及び弁論の分離は起こりえない。

 民訴法41条の拡張適用であれ、単純併合とした主観的順位的併合であれ、請求を2本既に立てている〔立ててしまったという表現の方がよりよく言い表すかもしれない。〕。

 民事訴訟法の原則では、民訴法152条1項により、裁判所の弁論分離権が認められており、この弁論の分離は「裁判所の裁量[4]」である。そして、その原則に対して例外的に民訴法41条が弁論及び裁判の併合強制をかけているにすぎない。

 そして、この例外がどのような場合かというと、原告の被告双方に対する請求が「法律上併存し得ない」場合とされている。この「法律上併存し得ない」関係がいかなるものかについては、立法担当者であられた柳田先生[5]が「法律の規定によって両立し得ない関係になっている場合」である、と言われている。これは、一方被告に対する請求原因事実が、他方被告において原告の請求を排斥する抗弁事実に該当することを言う。

民訴法41条の拡張適用を主張する者は、裁判所が、弁論及び裁判の併合強制を受けるのは、この一方被告に対する請求原因事実が、他方被告において原告の請求を排斥する抗弁事実に該当する場合であることを容易に認識できる(「拡張適用」と主張している時点で既に自らの請求が「法律上併存し得ない」こと、すなわち、自らの一方被告に対する請求原因事実が、他方被告において原告の請求を排斥する抗弁事実に該当する場合ではないことを十分認識していると言える。)。つまり、自らが、単純併合の構成で、請求を2本立て、且つそれが「法律上併存し得ない」関係にある以上、弁論が分離される可能性の予測がつくのである。

この場合の原告は、まず統一審判を図るのが第一の目標なのだから、統一審判を実現したいのであれば、民訴法41条の拡張などど言うべきではない。(冒頭にも申し上げたが、訴訟運営の指針としての「べき論」としては、傾聴すべき点はある。)

第2 予備的併合としたうえでの主観的順位的併合

1 通説的主観的予備的併合の定義の見直し

 訴えの主観的予備的併合とは、複数の被告に対する各請求が、実体上両立し得ない関係にある場合に、原告がいずれか一方の請求を主位的に主張し、それが認容されることを解除条件として、予備的に他の〔被告に対する〕請求の審判を申し立てる併合形態をいう[6]。

これが、主観的予備的併合に対する通説的な見解である。

 これに対して、滝川叡一元判事の有名な定義[7]は、「予備的請求の訴えは、その訴訟係属は主位的請求の確定的認容を解除条件として生ずるが、裁判の申立の面では主位的請求棄却の判決がなされることを停止条件とする申立」と定義する。

 請求(現民訴法134条2項2号)を、当事者〔原告〕の訴訟物の特定権能と理解し、申立て(現民訴法246条)を判決を求めることと理解すれば、原告により文言としては同一のそして唯一つの「請求」と「申立て」の間に、滝川説がいうように「時的な差」が存すると解釈することが可能ではなかろうか。

 「申立て」という文言は、例えば当事者尋問の「申立て」(民訴法207条1項)、除斥又は忌避の「申立て」(民訴法26条)、移送の「申立て」(民訴法21条)等に使われてはいる。しかし、後二者については、明らかに決定事項である。そして民訴法246条は「判決」の章である第二編第五章に置かれている。このことより、民訴法246条の「当事者が申し立てて」の申立ては、請求に対する判決であると言えよう。

 ここで、民訴法246条の「申立て」が民訴法134条2項2号の「請求」と同一のものを指しているのならば、民訴法246条は、「当事者が請求を立てていない事項」と書いていたはずである(旧民訴法224条1項及び旧民訴法186条についても同様である。)。

 このことは、通常の訴訟においては「請求」及び「申立て」が、文言としても時的にも同一であるため普段は意識されることが少ないが、主観的予備的併合の形態を採った場合にはじめて目に見えるのだ、と説明できよう。

 このことは、「請求」が明らかに異なり、判決を求める「申立て」にあきらかな順位がついている客観的予備的併合を想起すれば、より明らかであろう。

2 予備的併合は分離されない

 1で述べたことを前提とするならば、「条件附申立は一般には許されないが、その条件の成否が同一手続内で判明するものに限り適法とされるのであるから、主位的請求と予備的請求が同一の手続で審判されないことになると後者の申立は不適法として却下を免れない。従って当事者に請求を予備的に併合することを許す限り、裁判所が両者の弁論を分離することはできないし、主位的請求棄却の一部判決もできない[8]」ことになる。

 このことは、統一審判を求める原告にとって最良の構成である。つまり、統一審判を求める原告は、弁論分離がなされないことと、裁判の統一、即ち同時判決の二つが必要だからである。

3 予備的被告にも本案判決を下すという意味での順位的併合

 そして、主観的予備的併合に対する主たる批判である予備的被告の地位の不安定、つまり本案判決が下されないことという批判に対して、主位請求認容の場合には予備請求に対して棄却判決を下すという意味での順位的併合とすれば、主観的予備的併合の難点を克服することができる。

 択一的な請求を求めるのが予備的請求なのであるから、主位請求認容の判決に付随して予備請求棄却の判決を下しても、なんら原告の意に反することはない。

 そして、この方法が、旧民訴法186条〔現民訴法246条〕の解釈問題として、いわゆる予備的被告の地位の不安定を取り除く方法を提唱されていた、井上先生の見解[9]にも繋がるのではなかろうか。

第3 まとめ

 以上に述べてきたように、複数被告に対する請求が「事実上併存し得ない」場合において、統一審判の保障を受けたい原告は、予備的併合と構成したうえでの主観的順位的併合の方法により、統一審判を受けることができる。

以 上


[1] 伊藤眞『民事訴訟法』(有斐閣、第3版3訂版、2008)588頁は、現行法下における主観的予備的併合の適法性を主張する余地のなさを言い表す文脈の中で、「〔予備的被告の地位の不安定〕を解決するための理論、たとえば順位的併合の考え方は、むしろこの制度と類似の性質をもっていることなどを考慮すれば、…」と言われている。この文脈だけでは、伊藤先生が「予備的併合」と構成しているのか「単純併合」と構成されているのか判別できない。

なお、伊藤先生が引用されている上田徹一郎『民事訴訟法』(法学書院、第4版、2004)529頁は、主観的順位的併合を単純併合とする。

これに対して、福永有利「共同訴訟と訴訟参加の規律(下)」NBL558号57頁(1994)60頁は、「試案〔民事訴訟手続に関する改正要綱試案〔5頁〕〕は、『被告らに対する予備的併合を認め』といっており、審判要求としては、主位請求認容を解除条件として予備的請求の審判を求めるものであるが、ただこの訴えに対する判決としては、主位請求を認容するときは、予備的請求についても棄却の判決をすることにしただけのようにも読める。」と言われる。なお、同氏が、主観的順位的併合を「単純併合」と構成しているのか「予備的併合」と構成しているのか不明。

[2] 滝川叡一「請求の主観的択一関係と共同訴訟」本井巽=中村修三編『民事実務ノート(2)』(判タ社、1968)〔同「同」同編『同』108頁(判タ社、復刻版、1988)所収、127頁〕参照。詳しくは後述する。

[3] 竹下守夫=青山善充=伊藤眞編「研究会新民事訴訟法」ジュリスト増刊(有斐閣、1999) 64頁〔竹下発言〕、

[4] 秋山ほか『コンメンタール民事訴訟法Ⅲ』(日本評論社、2008)309頁

[5] 竹下ほか 前掲注3 70頁〔柳田発言〕

[6] 梅本吉彦『民事訴訟法』(信山社、第三版、2007)650頁

[7] 滝川叡一 前掲注2 127頁

[8] 滝川叡一 前掲注2 127頁

[9] 井上治典「訴えの主観的選択的併合の適否」判タ281号(1972)〔『多数当事者訴訟の法理』(弘文堂、1981)181頁所収、194頁〕は、旧法186条の解釈問題として、主観的予備的併合(及び主観的選択的併合)における原告の申立てを「主位請求認容、予備請求棄却」のワンセットか「主位請求棄却、予備請求認容」のワンセットであるととらえ、裁判所は、主位請求認容の場合でも予備的請求に棄却判決を下すことができると解釈することによって、いわゆる予備的被告にも本案判決を下す方法を提唱されていた。