予備試験 令和5年 民事訴訟法




令和5年・予備試験・民事訴訟法・問題

これから、筆者と一緒に「予備試験」の問題に挑戦していきましょう。予備試験の問題に挑戦するのに必要な知識や参考判例を掲記するので、予習をしてから、過去問に挑戦してみてください。令和5年の問題はちょっと難しいかもしれないですが、あえて5回目に挑戦する問題として取り上げます。


【予習事項】

  • 『リーガルクエスト民事訴訟法』518〜523、486〜504頁

【予習判例(設問1)】

【予習判例(設問2)】



重要なことは、予習をした上で、自分で実際に答案を書いてみることです。答練をした上で、下記の「参考解説レジュメ」に進んでください。



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令和7年11月3日

令和版「民訴法」初学者用の入門レジュメ(予備試験過去問解説編)

捧  大地

令和5年・予備試験「民訴法」参考解説

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【予習事項】

・『リーガルクエスト民事訴訟法』(第4版)518〜523、481〜504頁

【予習判例(設問1)】

・最判昭和32年2月28日(民集11巻2号374頁〔百選6版「31」〕)

・最判昭和52年7月19日(民集31巻4号693頁〔百選6版「A27」〕)

【予習判例(設問2)】

・最判昭和33年6月14日(民集12巻9号1492頁〔百選6版「88」〕)

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第1 設問1ついて

1 Yの主張の根拠

 Xは、①訴訟の第一審について「本案について終局判決があった後」(民訴法262条2項)に、Yに対する「乙建物収去・甲土地明渡請求」(以下、「旧請求」という。)を「Yの甲土地にかかる賃借権不存在確認請求」(以下、「新請求」という。)へと訴えの変更をしている。

⑴ 訴えの変更について

ア 訴えの変更

「訴えの変更(民訴法143条)とは、訴訟係属中に被告との関係で別の請求を審判対象とすることを求める原告の申立てをいう[1]」。

イ 訴えの交換的変更

 「訴えの変更には、訴えの追加的変更と訴えの交換的変更とがある[2]」が、本設問Xの行為は訴えの交換的変更にあたる。そして、訴えの交換的変更とは、後述する通り、訴えの追加的変更と訴えの取下げ(民訴法261条1項)の複合行為である。そのため、再訴禁止効(民訴法262条2項)が生じている。したがって、「乙建物収去・甲土地明渡請求」という①訴訟の旧請求と同一の請求である②訴訟は、本来提起することができず、訴えが却下されるべきである。

2 Yの主張の当否

⑴  旧請求について

 まず、新請求の提起により、旧請求は、当然に取り下げられたといえるのか。訴えの交換的変更は、訴えの取下げ行為を要せず、当然に旧請求の訴訟係属が消滅するのか否か、が問題となる。

ア 訴えの変更と訴えの取下げにおける被告の同意について

 訴えの変更(民訴法143条)は、その変更の要件として被告の同意を要求していない。そこで、訴えの交換的変更によって当然に旧請求の訴訟係属の消滅を認めることは、被告の同意を要する訴えの取下げ(民訴法261条2項)との均衡を失する。

イ 訴えの交換的変更の場合における旧訴の取下げについて

「訴えの変更とは、本来、新たな請求に係る訴えを追加的に併合提起すること(つまり、訴えの追加的変更)をいい、旧請求に係る訴訟係属を消滅させるためにはその請求に係る訴えを取り下げるか請求を放棄することを要し、訴えの取下げにはその要件(民訴法261条。被告の同意等)が必要になるとする。ただし、被告が訴えの交換的変更に異議なく応訴した場合には、旧請求に係る訴えの取下げについて黙示の同意をしたことになる(最判昭和41・1・21民集20巻1号94頁参照)。[3]」

ウ  判例

この旧訴の取下げについて判例(最判昭和32年2月28日・民集11巻2号374頁〔百選6版「31」〕)は、「この後者の場合〔訴えの交換的変更の場合〕においても訴の変更そのものが許さるべきものであるというだけでは、これによつて当然に旧訴の訴訟繋属が消滅するものではない。けだし訴の変更の許否ということは旧訴の繋属中新訴を追加的に提起することが許されるか否かの問題であり、一旦繋属した旧訴の訴訟繋属が消滅するか否かの問題とは係りないところだからである。もし原告がその一方的意思に基づいて旧訴の訴訟繋属を消滅せしめんとするならば、法律の定めるところに従いその取下をなすか、或はその請求の拠棄〔放棄〕をしなければならない。訴は原告の任意提起するところであるが、一旦提起した訴の繋属を消滅せしめんとするには、相手方の訴訟上受くべき利益も尊重さるべきであり、原告の意思のみに放任さるべきではない。それ故法律は原告の一方的意思に基づき訴訟繋属の消滅を来たすべき訴の取下、請求の拠棄等に関しては相手方の利益保護を考慮して、これが規定を設けている。すなわち「訴ノ取下ハ相手方カ本案ニ付準備書面ヲ提出シ、準備手続ユ於ナ申述ヲ為シ又ハ口頭弁論ヲ為シタル後ニ在リテハ相手方ノ同意ヲ得ルニ非サレハ其ノ効力ヲ生セス」とされ(民訴二三六条二項〔現261条2項〕、なお同条三項以下〔現261条3項以下〕、並びに二三七条二項〔現262条2項〕等参照)、また請求の抛棄はこれを調書に記載することによりその記載が確定判決と同一の効力を有するものとされているのである(同二〇三条〔現267条1項〕)。されば原告が訴提起の当初から併合されていた請求の一につき既になしたる弁論の結果これを維持し得ないことを自認しこれを撤回せんとするならば、その請求を拠棄するか、または相手方の同意を得て訴の取下をしなければならない。このことは原告が訴の変更をなし、一旦旧訴と新訴につき併存的にその審判を求めた後、旧訴の維持すべからざることを悟つてその訴訟繋属を終了せしめんと欲する場合においても、その趣を異にするものではない。果して然りとすれば原告が交替的に訴の変更をなし、旧訴に替え新訴のみの審理を求めんとする場合においてもその理を一にするものといわなければならない。何となればただ原告が訴の変更と同時に旧訴の訴訟繋属を消滅せしめんと欲したというだけで、相手方保護の必要を無視して直ちに旧訴の訴訟繋属消滅の効果を認むべきいわれはないからである。」としている。

 すなわち判例は、旧請求について、被告の利益の保護のためその訴えの取下げについては被告の同意(黙示の同意を含む)を要求している。

エ 本設問の検討

 本件①訴訟において、Xは明示的に旧請求の放棄等はしていない。他方、Yは訴えの変更について異議を述べておらず、旧請求の取下げについて黙示の同意があったと認められる。

⑵  再訴禁止効について

 次に、②請求を提起することは、訴えの取り下げの場合における再訴禁止効(民訴法262条2項)に抵触し却下されないのか。同項の「同一の訴え」の意義が問題となる。

ア 判例

判例(最判昭和52年7月19日・民集31巻4号693頁〔百選6版「A27」〕)は、「民訴法二三七条二項〔現262条2項〕は、終局判決を得た後に訴を取下げることにより裁判を徒労に帰せしめたことに対する制裁的趣旨の規定であり、同一紛争をむし返して訴訟制度をもてあそぶような不当な事態の生起を防止する目的に出たものにほかならず、旧訴の取下者に対し、取下後に新たな訴の利益又は必要性が生じているにもかかわらず、一律絶対的に司法的救済の道を閉ざすことをまで意図しているものではないと解すべきである。したがつて、同条項にいう「同一ノ訴」とは、単に当事者及び訴訟物を同じくするだけではなく、訴の利益又は必要性の点についても事情を一にする訴を意味し、たとえ新訴が旧訴とその訴訟物を同じくする場合であつても、再訴の提起を正当ならしめる新たな利益又は必要性が存するときは、同条項の規定はその適用がないものと解するのが、相当である」と判示している。

イ 本設問の検討

 本設問①訴訟における旧請求と②訴訟の請求は、XとYという同一の当事者間にかかる請求であり、その内容も「乙建物収去・甲土地明渡請求」と同一である。したがって、訴訟物は同一である。

 もっとも、Xによる訴えの交換的変更は、Yが、①訴訟の控訴審において、「乙建物はAら3名の増改築によってその形状が著しく変更されており、同建物はAら3名の所有に属するものとなっている」旨の主張がなされ、Xにおいても、同建物の付合関係について誤認をして旧請求を維持することができなくなったとの誤認によりなされたものである。

 さらに。Yは、①訴訟の確定後に、前言を翻し、乙建物の所有がYにあるとの主張をなした。これにより、Xにおいては、②訴訟を提起する「新たな必要性」が生じたものである。

 したがって、②訴訟は、「同一の訴え」には該当しない。

⑶ 結論

 如上のとおり、②訴訟は再訴禁止効に抵触しない。よって、Yの主張は正当ではない。

第2 設問2について

1 訴訟上の和解の既判力の有無

 まず、Xとしては、Yの詐欺により和解を取り消し(民法96条1項)、その無効(民法121条)を主張したい。

 この場合において、訴訟上の和解は、「確定判決と同一の効力」を有する(民訴法267条1項)ところ、これに既判力が含まれるとすれば、再審事由(民訴法338条)がない限り、無効主張をすることができないことになる。

 そこで、「確定判決と同一の効力」に既判力が含まれるか否かが問題となる。

⑴  判例

判例(最判昭和33年6月14日民集12巻9号1492頁〔百選6版「88」〕)は、原和解の「意思表示にはその重要な部分に錯誤があつた」という事案において、「原判決は、本件和解は要素の錯誤により無効である旨判示しているから、所論のごとき実質的確定力を有しないこと論をまたない」として、和解が無効な事案において、既判力を否定している。

⑵  学者の見解

笠井正俊先生[4]は「条文の解釈として民訴法267条の『確定判決と同一の効力を有する』という文言が決め手にならないことは既判力否定説の説くとおりである。たとえば民訴法396条は支払督促について『確定判決と同一の効力を有する』と定めるが、支払督促には執行力があるが既判力がないことが明らかだからである。」

 そこで、「まず、既判力を肯定するか否定するかで結論が分かれる事柄としてどのようなものがあるかを確認しておく必要がある。和解の当事者間の拘束力に関しては、既判力を否定する見解も合意の実体法上の拘束力は肯定するので、既判力を否定する見解との間で実際上それほどの違いは生じない。しかし、第三者に対する拘束力、とくに和解成立後の承継人に対する拘束力(民訴法115条1項3号の適用)に関しては、既判力を肯定すればこれを肯定できるのに対して、既判力を否定すれば、実体法上の契約が第三者を直ちに拘束するとはいえないので、否定すべきこととなる。そうすると、第三者に対する拘束力に関しては、既判力を肯定するか否定するかで結論に違いが生じる。」

 そして、「和解の紛争解決機能の充実、すなわち、第三者への拘束力を含めた法的安定性を図るためには既判力を肯定する必要があるというべきである。」

 「他方、訴訟上の和解が実体法上の合意という性質も有することからすると、意思表示の瑕疵による無効を認めず、再審事由がないかぎり既判力を覆すことができないとするには行き過ぎである」とされる。

⑶  結論

 よって、Xの意思表示は、Yの詐欺を理由として取り消すことができ、無効となる。

2 和解の無効原因の主張方法について

 和解の無効原因を主張する方法に関しては、如上の既判力制限的肯定説によれば、①口頭弁論期日指定の申立てを行う方法が原則であるが、②和解の無効確認の訴えを行う方法、及び③和解調書によって強制執行をされるおそれのある債務者が請求異議の訴え(民事執行法35条)も提起することができるとするのが「判例・実務の取扱いである[5]」。

 笠井先生[6]によれば、「学説上は、期日指定の申立ての方法が認められるべきであるとすることには多くの学説が賛同しており、理論的には、期日指定申立てを本来の方法とする考え方が正当である。和解が無効である以上、旧訴訟が続行されるのが手続的に自然であり、従来の訴訟資料も活用できる。」

 また、「和解無効確認の訴えについては、これを認めることを前提とする明文規定もあること(民執39条1項2号)から、その適法性を否定することには困難が伴う。もっとも、一般に期日指定申立てによるべきであるので訴えの利益を欠くが、これは何らかの事由(たとえば当事者以外の者が主体として加わった和解)で期日指定申立てによることができないため訴えの利益が認められる場合を前提にした規定であるとして、和解無効確認の訴えが適法な場合を限定する解釈は可能である。また、請求異議の訴えは和解条項において給付義務を負う者のみが原告となるが、そのような者にとっては、強制執行の不許を求めるとともに強制執行の停止を認める明文の規定があることから(民執36条1項)、有効な方法であることは否定し難い。」

 そこで、「上記のように期日指定申立てが理論的に正当なものであるので、本則としてはこれによるべきであるが、それで十分にまかなえない場合には、他の方法を否定するものではない」とされる。

⑴  本設問における検討

 本設問事案においては、和解の無効確認の訴えの方法を採ることは、期日指定申立ての方法によることができるため、訴えの利益を欠き不適法である。

 また、期日指定申立ての方法の方が、従前の訴訟資料を活用できるため簡便であり、何よりも第一審で勝訴している。

⑵  結論

 よって、Xとしては、期日指定申立ての方法によるべきである。       

以 上


[1] 『リーガルクエスト民事訴訟法』(第4版)518頁

[2] 『リーガルクエスト民事訴訟法』(第4版)519頁

[3] 『リーガルクエスト民事訴訟法』(第4版)519頁

[4] 『リーガルクエスト民事訴訟法』(第4版)497・498頁

[5] 『リーガルクエスト民事訴訟法』(第4版)499頁

[6] 『リーガルクエスト民事訴訟法』(第4版)499・500頁


【令和5年・予備試験、参考解説レジュメ】



本文で引用した書籍は、以下の書籍です。

『リーガルクエスト民事訴訟法(第5版)』