最高裁昭和46年11月25日判決




令和8年2月9日

令和版「民訴法」初学者用の入門レジュメ(判例紹介編)

捧 大地

<今回の学習>

【最判昭和46年11月25日(民集25巻8号1343頁〔百選6版「70〕)】

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〜(賃貸借建物の明渡請求訴訟における)引換給付判決〜

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第1 事実の概要[1]

1 事案

X(原告・被控訴人・被上告人)は、Y(被告・控訴人・上告人)に京都市内の繁華街(河原町)にある木造二階建て店舗の階下部分(約27坪)を昭和28年に賃貸し、Yは、そこで果物小売店を営んでいた。契約は2年ごとに更新され、昭和32年12月に賃料は1ヶ月2万5000円と約定されていた。

昭和34年10月、Xは、本件建物を取り壊して、その跡地に高層ビルを建てることを計画し、Yに本件賃貸借契約を解約告知し明渡しを求めたが、Yはこれに応じなかった。そこで、昭和38年6月、Xは、Yに対して、更新拒絶・期間満了を理由に本件店舗の明渡しを求めて訴訟を提起した。

その後、本件建物の老朽化による改築の必要、敷地の自己使用の必要(Xの親会社Aのグループ会社を集約させる)などの正当事由に基づく賃貸借契約の解約告知を追加主張した。さらに、昭和39年6月の口頭弁論期日に、予備的請求として300万円の立退料を正当事由の補強条件として、その支払いと引換えに本件店舗の明渡しを求めた。

2 第一審

   第一審は、無条件の解約告知には正当事由がないとして、Xの当初の請求を棄却し、予備的請求を認容して、300万円の支払いと引換えに本件店舗の明渡しを命じた。

3 原審

   原審は、予備的併合ではなく、1個の請求と捉えつつ、「特に反対の意思がうかがわれない限り、解約申入をする者はその主張する金額に必ずしもこだわることなく、一定の範囲内で裁判所にその決定を任せていると考えるべき」として、第一審判決を変更して500万円の支払いと引換えに本件店舗の明渡しを命じた。

4 上告

   原審判決に対して、(立退料500万円は過少であり)漫然と500万円と認定したのは違法である等と主張して、Yが上告した。

第2 最高裁判旨

◯ 主 文 ◯

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人Yの負担とする。

◯ 理 由 ◯

上告代理人〔氏名略〕の上告理由について。

〔中略〕

同第四について。

原審の確定した諸般の事情のもとにおいては、被上告人Xが上告人Yに対して立退料として300万円もしくはこれと格段の相違のない一定の範囲内で裁判所の決定する金員を支払う旨の意思を表明し、かつその支払と引き換えに本件係争店舗の明渡を求めていることをもつて、被上告人Xの右解約申入につき正当事由を具備したとする原審の判断は相当である。所論は右金額が過少であるというが、右金員の提供は、それのみで正当事由の根拠となるものではなく、他の諸般の事情と綜合考慮され、相互に補充しあつて正当事由の判断の基礎となるものであるから、解約の申入が金員の提供を伴うことによりはじめて正当事由を有することになるものと判断される場合であつても、右金員が、明渡によつて借家人の被るべき損失のすべてを補償するに足りるものでなければならない理由はないし、また、それがいかにして損失を補償しうるかを具体的に説示しなければならないものでもない。原審が、右の趣旨において500万円と引き換えに本件店舗の明渡請求を認容していることは、原判示に照らして明らかであるから、この点に関する原審の判断は相当であつて、原判決に所論の違法は存しない。したがつて、これと異なる論旨は、採用しえない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

以 上


[1] 中山幸二「判例評釈」百選6版148頁