最高裁昭和41年4月12日判決




令和7年10月1日

令和版「民訴法」初学者用の入門レジュメ(判例紹介編)

捧 大地

<今回の学習>

【最判昭和41年4月12日(民集20巻4号548頁〔百選「A 14」〕)の紹介】

——————————————————————————-

〜譲渡担保認定に関する弁論主義違反〜

——————————————————————————-

第1 事実概要

1 事案

 Y1甲・Y1乙・Y1丙・Y1丁(以下「Y1ら」という。)は、Bの相続人である。Y2は、Aの子である。以下、一般的な日本語(参照:裁判所法74条)の使い方として分かりやすい表記・略記を用いる場合がある。

 X(原告・控訴人・上告人)は、Y1らとY2に対して、XからY1さらにY2へと所有権移転登記がなされた土地について、自己の所有権を主張して、その登記の抹消を求めて提訴した。

2 当事者の主張

⑴  Xの主張

 本件土地は①Xの元所有であったが、②(Y1らの被相続人)Bに代物弁済し、その後(Y2の父)Aから借りたお金で③Xが買い戻したと主張した。

  Xの主張:①X→②(Y1らの被相続人)B→③X

⑵  Y側の主張

 ❶X所有の本件土地を❷Bが代物弁済で取得して、❸その後Aの所有となった。ただし、Xが一定の金員を持参することによって、Xに売却する契約があった。

    Y側の主張:❶X→❷(Y1らの被相続人)B→❸(Y2の父)A

3 原審の認定

 本件土地は、(ⅰ)Xの元所有であったが、(ⅱ)代物弁済で(Y1らの被相続人)Bが取得し、(ⅲ)Xが(Y2の父)Aから借りた金員でBから買い戻し、直ちにAへの譲渡担保に供したが期間の徒過によって(ⅳ)Aの所有となったと認定した。

  原審の認定:(ⅰ)X→(ⅱ)(Y1の被相続人)B→(ⅲ)X→(ⅳ)(Y2の父)A

4 Xの上告理由

 Xは、Aへの譲渡担保という当事者の主張のない事実の認定は弁論主義違反に当たるとして上告した。

第2 最高裁判旨

◯ 主    文 ◯

 本訴請求中、被上告人Y1甲、同Y1乙、同Y1丙、同Y1丁に対し、第一番〔ママ〕判決添付別紙目録記載の土地につきなされた大阪法務局受付昭和29年8月28日第一八、二九一号原因同年同月同日代物弁済予約の所有権移転請求権保全の仮登記の抹消登記手続を求める部分に関する本件上告を棄却する。

 本訴請求中、その余の部分に関する原判決を破棄し、、〔ママ〕右部分を原審大阪高等裁判所に差し戻す。

 第一項の請求に関する上告費用は、上告人の負担とする。

◯ 理    由 ◯

 まず、上告人X(原告)の本訴請求中、被上告人Y1甲、同Y1乙、同Y1丙、同Y1丁に対し、所有権移転請求権保全仮登記の抹消登記手続を求める部分に関する上告の当否について判断する。

〔上告理由第1点に関する部分につき、省略〕

 つぎに、本訴請求中、被上告人Y1甲、同Y1乙、同Y1丙、同Y1丁に対し、代物弁済を原因とする所有権移転登記の抹消登記手続を求める部分、および、被上告人(被告)Y2に対し、売買を原因とする所有権移転登記の抹消登記手続を求める部分に関する上告の当否について判断する。

 右上告代理人の上告理由第二点は、原判決に当事者の主張しない事実に基づいて判断した違法があるという。

 原審における前記請求に関する当事者の主張は、上告人において、本件土地(第一審判決別紙記載の土地)は、上告人の所有であるが、有効な登記原因がないのに被上告人Y1甲、同Y1乙、同Y1丙、同Y1丁の被相続人であるBに対し大阪法務局受付昭和29年12月10日第二六、◯七五号をもつてい〔ママし〕た同年11月28日代物弁済を原因とする所有権移転登記がなされ、ついで、被上告人Y2に対し同局受付昭和30年12月14日第二四、九〇四号をもつてした同年同月同日売買を原因とする所有権移転登記がなされているから、被上告人らに対し、それぞれその抹消登記手続を求める旨主張し、被上告人らにおいて、上告人の本件土地に対する所有権喪失原因として、右Bは、上告人に対し金65万円を貸与し、右貸付金に対する停止条件付代物弁済契約の条件成就もしくは代物弁済予約契約に基づく予約完結の意思表示により上告人より本件土地の所有権を取得し、上告人主張のB名義所有権移転登記手続をなした。そして、その後、Bは、〔Y2の親〕Aに対し本件土地を譲渡し、被上告人Y2名義で上告人主張の所有権移転登記手続をなした旨主張したものであること記録上明らかである。

 原判決は、その理由において、本件土地が代物弁済によりBに所有権が移転した旨認定したが、さらに進んで、上告人は、その後〔Y2の親〕Aより金85万円を借り受けてBより本件土地を買い戻し、〔Y2の親〕Aに対し本件土地を右借入金の売渡担保として譲渡し、二箇月の期間内に金95万円で買い戻しうる旨約したが、上告人において右買戻期間を徒過したので、Aの子供である被上告人Y2名義に所有権移転登記手続がなされたものであつて、上告人は、一旦取り戻した本件土地の所有権を右のようにして失つたものであるから、上告人の請求は理由がない旨を判示したものであることは所論のとおりである。

 しからば、原判決は、上告人において本件土地をBより買い戻した旨を認定した以上、上告人が現に本件土地所有権を有しないのは、上告人より〔Y2の親〕Aへ本件土地を譲渡したという理由によるものであつて、Bが上告人より本件土地を代物弁済により取得したという理由によるものではないといわなければならない。しかるに、上告人より〔Y2の親〕Aへの本件土地譲渡の事実は、原審口頭弁論において当事者の主張のない事実であるから、原判決は、当事者の主張のない事実により上告人の前記請求を排斥したものというべく、右の違法は判決に影響があること明らかであるから、原判決中前記請求〔に〕関する部分は、その余の上告理由の当否について判断するまでもなく、この点において破棄差戻を免れない。

 よつて、民訴法三九六条、三八四条、四〇七条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

第3 本判決に対する評釈

 「本判決は、X→Y1を抗弁事実、Y1→Xを再抗弁事実、X→A(Y2)を再々抗弁事実として、原審が当事者からの主張のないX→A(Y2)を認定したことについて弁論主義違反とした。(脚注2)」

 これに対して、本件では事実そのものは弁論に出ており、当該事実の裁判所の法的な評価と当事者の法的構成が異なっていたにすぎないので、弁論主義違反ではない旨の批判[1]がある。

 このような批判に対して、薗田史先生[2]は、「事実の法的評価は裁判所が自由になしうるもので弁論主義違反でないと理解する場合でも、当事者にとって不意打ちとならないよう、裁判所がどのような法的構成をとるかを当事者に示し、当事者に十分な主張立証活動を保障しなければならない」として、裁判所に法的観点指摘義務がある旨、指摘されている。

以 上


[1] 新堂幸司『新民事訴訟法』(弘文堂、第6版、2019)477頁

[2] 薗田史「判例批評」百選6版242頁